少し前の新聞記事(2021年3月18日(金))で
司法の憲法解釈で画期的と思える判決が出た。
・札幌地裁で『同性婚を認めないのは違憲』の判決。
という内容。
興味本位でその判決について一般紙4紙の扱いを簡単に比べてみた。
せっかく比べたのでブログにUPすることにした。
読売:1面トップ記事の見出しは『緊急事態21日全面解除』
1面では囲み記事で判決のポイントが記載されていた。
・同性愛は精神疾患ではなく、性的指向は自分の意志で選べない
・同性婚を認めない民法などは「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反
・国が立法措置を怠ってはいないので賠償請求は棄却
という内容。
準トップ記事の見出しは『LINE情報閲覧可能状態』
札幌地裁の判決内容の記事は1面準トップ記事の下、
3番手の扱いで『同性婚認めぬのは「違憲」』という見出しで、
今回の札幌地裁の判決内容を簡潔に記載している。
そのほかは、なぜか?国際面(6面)の下段に『判決要旨』が載っている。
社会面(35面)では『同性愛者に生きる希望』という見出しの記事で、
「実質的な勝訴」。民法と戸籍法が「憲法違反」との判決が示されると
原告は顔を見合わせ喜びをかみしめた。
一方、法務省は他の裁判結果も注視したいとのコメント。
朝日: 1面トップ記事の見出しは 『同性婚認めぬのは違憲』
時時刻刻(2面)で判決の詳説の記事を掲載。
囲み記事には、同性婚訴訟の主な争点として以下の2点について
原告の主張、国の主張、札幌地裁の認定をそれぞれ掲載。(内容は省く)
・憲法は同性カップルにも婚姻の自由を保障しているか(憲法24条)
・同性婚ができないことは、不合理な差別的取り扱いといえるか(憲法14条)
総合(4面)で札幌地裁の違憲判決を受けての
自民と野党の意見を掲載。
野党「立法府が答えを出すとき」
自民「理解なく導入なら混乱」
との主張。
社説(14面)「違憲」の解消を急げという記事。(内容は省く)
社会面(35面)カット見出は「同性婚 希望見えた」と記載。
見出しは「裁判長は声震わせ原告「一生忘れない」
脇見出しは「認めない法規定「違憲」判断
囲み記事で憲法学専攻の学者と家族法専攻の学者の意見を掲載。
各地で同様な裁判の原告の意見も掲載。
朝日のみ判決要旨の記載なし。
毎日:1面トップ記事の見出しは『同性婚認めないのは違憲』
クローアズアップ(3面)で判決の詳説の記事を掲載。(内容は省く)
囲み記事には、札幌地裁の憲法判断として
憲法13条、14条、24条についての記載があった。
個人の尊重(憲法13条)合憲
同性婚制度を直接導き出すことは困難
法の下の平等(憲法14条)違憲
同性愛者は結婚の法的効果の一部すら受ける
手段がない。立法府の裁量権の範囲を超え、
合理的根拠を欠く差別に当たる
結婚の自由(憲法24条)合憲
憲法制定時は同性婚は許されず、
同性婚は定めていない
そのほか、28か国・地域が認めるという見出しで、
NPO法人 ENA日本調べの同性婚ができる国・地域と導入年を記載。
2001年オランダから2020年コスタリカまでの28の国・地域がきさいされている。
G7はイタリアと日本を除く国名が上がっている。
社説(5面)「人権を尊重した画期的な判断」という見出し(内容は省く)
社会面(30面)「このままの私でいい」同性カップル、法整備に期待という見出し
30面ではそのほか、判決要旨と今回の裁判長の略歴や家族法専攻の学者の意見を掲載。
産経:1面トップ記事の見出しは『与那国・対馬に電子戦部隊』
1面産経抄で、今回の札幌地裁の違憲判決(憲法14条)と
2月の東京地裁の「同性同士の性的行為も不定行為」という判決内容は
以外だったとの主張が掲載されている。
また、記事では憲法24条では同性婚を禁止している。
同性婚を認めるのであれば憲法改正を求めるべきとのこと。
ただし、同性婚を認めるのは世界的潮流であること、全国の自治体が
同性カップルを結婚に相当すると認める条例が増えていることを
歓迎すること。
男女平等と夫婦別姓は別の問題であることなどを記載。
主張(2面)で「婚姻制度理解せず不当だ」の見出し記事。
同性婚を認めないのは法の下の平等を定めた憲法14条に
反すると「違憲」判断を示した。耳を疑う。
婚姻制度は男女を前提とし、社会の根幹を成す。
それを覆す不当な判断との記事。
記事では憲法24条についての札幌地裁の判断にもふれ、
「婚姻は両性の合意のみに基づく」との条文は「異性婚
について定めたものであり、同性婚について定めるものではない」
という内容では憲法24条は憲法14条違反ということになる。
との記事。
社会面(24面)判決要旨(内容は省く)
社会面(26面)「同性婚の不受理違憲」という見出し記事。
産経は26面で判決内容を客観的に掲載している。
記事の量的には
朝日=毎日>読売=産経、という印象。
ここまでは、3月18日(金)一般各紙の紙面を紹介しましたが、
その後、札幌地裁判決関連の一般紙記事を2つご紹介。
読売:同性婚訴訟判決「違憲」判断には疑問が残る
3月20日掲載の社説。
「同性同士の結婚を認めるかどうかは、家族のあり方の根本にかかわる。
社会的な合意がない中、同性婚を認めない民法などの規定を違憲と断じた
判決には疑問が残る。」という書き出し。
「同性婚を法的に認めるには、社会の幅広い同意が不可欠だ。
時代の変化を踏まえつつ、伝統や国民感情を含めた社会状況に基づいて、
慎重に議論すべきである。」と締めくくっている。
朝日:同性容認、30の国・地域で 立法で導入した国や司法判断のきっかけも
3月30日掲載。
「・・・・。世界では約30の国や地域で同性婚が認められているが、
司法の判断がきっかけとなったところも少なくない。・・・・
同性婚訴訟弁護団によると、同性婚を認める約30の国・地域のうち、
司法の判断により同性婚の導入したのは・・9。・・・・
一方、立法で同性婚を導入した国は19にのぼる。」
家族法専攻の学者の意見として
「世界的に同性カップルの保護は、パートナーシップ制度から同性婚へと
集約されてきている」と記載。
「日本でも今回の判決が議論の機運を高めるだろう」と期待を寄せる。
一方最後に、国際人権法専攻の学者の意見として
日本では東アジアに共通する「伝統的家族観」への固執がある。
これは宗教的な信条と似ているところがあるといい、
「伝統的家族観のみにとらわれず、人権を等しく保護していくという考え方が
浸透していけば日本でも同性婚が認められるようになるのでは」とみる。
と締めくくっている。